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| 吉岡家吉岡・紗江子・純次
| 吉岡 | 修学旅行から帰宅した吉岡。
| 紗江子 | 笑顔でそれを迎えた紗江子は、妙につやつやとしていた。夫婦水入らずの時間を過ごしていたらしい。
| 純次 | 一方、隣に座る純次は精魂搾り尽くされたようにしおしおにやつれていた。
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紗江子 | 娘の前で何があったのか言えない(?)紗江子は、慌てて話題を変えようと日光バージョンのご当地ナマコちゃんグッズを見せる。
| 吉岡 | そのグッズを見た吉岡の反応は、どこか気まずそうなものだった。
| 純次 | 吉岡が見せたこの態度は純次の心を折るのに充分なものだった。もし「気持ち悪い」と拒絶されたらもう立ち直れない。
| 純次 | 散歩に行くと行って、その場から逃げ出す純次。
| | 公園純次・みつば・ふたば
| みつば・ふたば | 修学旅行からの帰り道、みつばとふたばは通りがかった公園で純次の姿を見掛ける。
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純次 | 遊具にまたがって黄昏れていた純次。まだ吉岡にナマコちゃんの作者であることをカミングアウトしていないと打ち明ける。
| みつば | きっとナマコちゃんは娘に嫌われているから言えないと語る純次に、みつばは誰に嫌われようがどうでもいいんじゃないかと言うが…。
| ふたば | ふたばは同じ創作者としての立場から、創作者とはそういうものではないことを語る。
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佐藤 | 砂で汚れたふたばの顔を見たみつばは、ふたばを吉岡に見立ててカミングアウトの練習をしようと提案する。
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みつば | 次にみつばは別のバージョンも練習しようと提案する。
| ふたば | みつばに何やら耳打ちされたふたばは、表情が一変。見下すような目線でナマコちゃんをこき下ろし始めた。
| みつば | この練習の目的は、いざ吉岡に否定された時にも耐えられるように心を鍛えること。
| ふたば | なおもふたばはナマコちゃんを罵倒する。
| ふたば | 「気持ち悪い」「陳腐」「幼稚」「デザイン適当」「作られたブーム」「ワゴンセール」「子供だまし」「色がキモい」「ステマ」…。
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みつば | これだけ罵られれば、さすがに慣れて平気になっただろうとみつばが確認すると…。
| 純次 | 純次は頷いたものの、完全にネガティブモードに入っていた。純粋すぎる彼は、洗脳よろしく言われた言葉をそのまま受け入れてしまったのだ。
| 純次 | そしてふたば(吉岡)に言われたように、ひわい小説で一発当てるぞなどと言い出す。
| ふたば | 想定外の反応に、ふたば(吉岡)は慌ててフォローし直すが…。
| 純次 | ドン底まで落ちた純次はもはや聞く耳持たずという感じであった。しかし思い掛けない言葉がその心を溶かす。
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吉岡 | 「私だよっ」。
| 純次 | いつの間にか吉岡本人が話に加わっていた。予期せぬ娘の登場にビクッとする純次。
| 吉岡 | さっき見せた吉岡の気まずそうな態度。あれは吉岡もお土産でナマコちゃんグッズを買っており、ダブってしまったことに対してのものだったと語る。
| 純次 | ナマコちゃんの作者であることを知っていたのかとおずおずと尋ねる純次。
| 吉岡 | 問われた吉岡は、家中ナマコちゃんだらけならさすがに気付くと言う。
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吉岡 | そしてさっきの感想も気を遣ったものではない、素直な感想だという吉岡。
| 純次 | その言葉にすっかり立ち直った純次は、頑張ってナマコちゃんを描きまくるぞと意気込みを見せる。
| | これにて一件落着…かと思いきや、もう一波乱が待っていた。
| 吉岡 | 吉岡は純次が棒で足元に書いていた文章に気が付く。それは転身に向けて純次が書いていたひわい小説の一節であった。
| 吉岡 | それを聞いた吉岡の目の色が変わる。「ナマコちゃんよりこれを書いた方がいいと思うな!!」。ふんす。
| 紗江子 | どこかで様子を窺っていたのか、いきなり紗江子も飛び出してきてそれに同調する。
| | かくして子供向けの絵本作家から、官能小説家を目指すことになった純次。嘘から出た真とはこのこと。そして数ヶ月後にはデビューを果たしたという…。
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