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| 矢部の部屋矢部・みつば・ふたば・ひとは
| 矢部 | 汗をかきながら段ボール箱を抱えて運ぶ矢部。
| ふたば・みつば | そこを通りがかったのが、ふたばとみつば。何をしているのかとふたばが尋ねると…。
| 矢部 | 矢部の返事は「今日引っ越しする」というものだった。
| ふたば | それを聞いて驚くふたば。まさか家賃が払えないほど困窮していたとは…。
| 矢部 | 無論そんなことはなく、矢部が言うには、きっかけはここが事故物件だと判明したことにあるらしい。
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ひとは | それに追い打ちを掛けて、先日ひとはに「自殺ではなく本当は殺人だった」と教えられてしまったのだ。
| 矢部 | かくして引っ越しを決意した矢部。それではしょうがないとふたばたちも納得する。
| ふたば・みつば | そしてふたばたちは引っ越しを手伝うと申し出る。みつばは引っ越しそば(エビ天つき)がお目当てのようだが。
| 矢部 | 矢部はふたりに「ひとはには内緒」と念を押す。ひとはに知られたらまた勝手に合鍵を作られて侵入されてしまうに違いない。
| ひとは | ところが当のひとはは、引っ越しの段ボール箱の中に膝を抱えて潜んでいた。
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ひとは | ひとはの意味不明な行動に戸惑うみつばたちに、ひとはは言った。これは引っ越し祝いのサプライズなのだと。
| ひとは | 新居に到着したら箱の中から突然姿を見せ、矢部を驚かせようというのだ。てってれー。
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ふたば | 箱を開けられてはせっかくの仕込みがバレてしまう。仕方なくその布――ひとはのワンピースを引っ張り出すふたば。
| ひとは | 当然箱の中のひとははパンツ一枚に。かろうじて羽織っていたカーディガンが残されているだけである。
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5 |
ひとは | 箱が密封されて、呼吸が出来なくなっていたようだ。はぁはぁと苦しげに喘ぐひとは。
| ふたば | 急いで空気穴を開けなくては。ふたばは手に取った包丁を箱に突き刺す。
| ひとは | 包丁の切っ先は危うく箱の中で膝を抱えるひとはに刺さるところであった。
| ふたば | さらにドスドスと無造作に包丁を突き立てるふたば。止めようとするみつばの言葉にもお構いなし。テレビで観たマジックと同じだと思ってるようだ。
| ひとは | 幸い中のひとはは無事だったらしい。トントンと箱の中から信号が送られてくる。
| ひとは・ふたば | そのメッセージは、中に入ってるのがみつばだったら無事じゃなかったと伝えるものだった。両者の「スキマのちがい」が幸いしたようだ。
| みつば | 「モールス信号でディスるのやめて」
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| 矢部の実家矢部・矢部の母・みつば・ふたば
| 矢部たち | ともあれ引っ越しの準備も終わり、軽トラックで新居へ向かう一行。
| 矢部たち | 着いたのは意外なほどすぐ近くだった。その新居にはなぜか既に「矢部」の表札が。
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7 |
ふたば | 宅内に段ボールの山を運び入れたあと、ふたばは矢部にフィギュアを全部くれないかと申し出る。箱ごとひとはを回収しようと目論んだのだ。
| 矢部 | ただそのフィギュアは矢部にとっても大事なもの。当然しぶる矢部だったが…。
| 矢部 | ふたばの必死の訴え、そして母親からの視線のプレッシャーに押し切られ、しぶしぶ承知する。
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みつば・ふたば | 無事回収してホッと一息……したも束の間、箱を開けて驚愕するふたり。なんと箱の中身は本物のフィギュアだったのである。
| みつば | 他にもフィギュアの箱があることに思い至ったみつば。
| 矢部 | 一方矢部の家では…矢部が両親に箱の中のものの価値について説明していた。
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