みつどもえのルーツを探る(その②)
進むべき道Road to Champion
かくして漫画界の頂点たる少年ジャンプで、華々しいデビューを飾った我らがのりお先生。何と言っても天下に轟く大正義・少年ジャンプ、それまで投稿を重ねていたことも考えれば、
そのままジャンプで連載を目指していくのが常道でしょう。
しかし赤塚賞と同時期に投稿した別の作品が、先生の運命を大きく変えることになります。
『KIDNEY TROUBLE』
週刊少年チャンピオン・第60回新人まんが賞の特別奨励賞(※)
受賞作。わずか10日で仕上げたという12Pのギャグ漫画。
あらすじ「公園で内輪揉めする風華とあゆみの前に、
デブで手加減知らずのとも子が現れ…。」
(※)常設されている賞ではない。賞金10万円也。佐藤健悦・梅田阿比らも受賞者。
週刊少年チャンピオン・第60回新人まんが賞の特別奨励賞(※)
受賞作。わずか10日で仕上げたという12Pのギャグ漫画。
あらすじ「公園で内輪揉めする風華とあゆみの前に、
デブで手加減知らずのとも子が現れ…。」
(※)常設されている賞ではない。賞金10万円也。佐藤健悦・梅田阿比らも受賞者。
瀬口たかひろ先生(『オヤマ! 菊之助』『恋愛出世絵巻 えん×むす』)
笑えた! だが、ノリが既成作家に似すぎ。ギャグ漫画は新鮮さが大切なので、
独自のスタイルを模索するか、自分色に消化すべきでは。
キャラは光っているので将来性に期待する。
笑えた! だが、ノリが既成作家に似すぎ。ギャグ漫画は新鮮さが大切なので、
独自のスタイルを模索するか、自分色に消化すべきでは。
キャラは光っているので将来性に期待する。
立原あゆみ先生(『本気!』『弱虫(チンピラ)』)
くだらなくて笑えましたが、君にしか、描けないネタが必ずあると思います。
くだらなくて笑えましたが、君にしか、描けないネタが必ずあると思います。
浜岡賢次先生(『浦安鉄筋家族』)
出た!! 正統派ギャグ漫画!! 傑作です。
このままデビュー&連載しちゃってください。
出た!! 正統派ギャグ漫画!! 傑作です。
このままデビュー&連載しちゃってください。
米原秀幸先生(『フルアヘッド!ココ』)
面白かった。「おまえは山の神か!!!」には、思わず吹き出した。
人懐っこい絵柄と、展開のギャップが良い。ボーッとズーッと読んでいたいですね。
面白かった。「おまえは山の神か!!!」には、思わず吹き出した。
人懐っこい絵柄と、展開のギャップが良い。ボーッとズーッと読んでいたいですね。
樋口茂編集長
笑った。細かいところにも観察が行きとどいたキャラクターの表現は非常に面白い。
テンポも良く一気に読ませる。年齢的にも今後に期待したい。
笑った。細かいところにも観察が行きとどいたキャラクターの表現は非常に面白い。
テンポも良く一気に読ませる。年齢的にも今後に期待したい。
総じて高評価ですね。
比較的辛口で知られる米原先生も、ベタ褒めと言ってよいコメントでしょう。
のりお先生もこの作品は「人生史上最高傑作」(当時)と仰っているように、相当の手応えを
感じていたようです。ぜひ読んでみたいものですが、雑誌には未掲載。残念です。(※1)
先生にとって大きかったのは、ご自身が漫画家を志した頃から影響を受けてきた漫画
『浦安鉄筋家族』の浜岡賢次先生からの絶賛でした。
「人生で1番嬉しかったこと」というほどのこの出来事は、プロの扉を開けた先生に
「チャンピオンへ行こう」と決心させるに十分なものでした。
ジャンプを蹴ってチャンピオンへ。ジャイアンツに指名される可能性がありながら、
敢えてヤクルトやら広島やら逆指名するようなもんです。なんという?気。
授賞式の様子。(一部フィクションです)
「既存の漫画から抜け出ていない」「ノリが既成作家に似すぎ」
投稿作に対する評で言及されていたこの指摘。既存作との類似。
その既存作とは『浦安鉄筋家族』に他なりません。
そう。のりお先生は『浦安』があまりにも好きすぎて、そして自身の目指す道しるべとして、
良くも悪くもその作風に強い影響を受けていたのです。(※2)
師匠とまであがめる浜岡先生。
のりお先生にとっては尊敬してやまない、まさに太陽のごとき憧れの存在でしょう。
そんな存在に少しでも近づきたいというのは、誰もが抱くごく自然な感情。
決して責められるような性質のものではありません。
しかし個性や独自性も資質として問われる漫画家にとっては、二番煎じと言われかねない
諸刃の刃でもあります。実際「浦安フォロワ-」というイメージは、デビュー以降もずっと
のりお先生に付きまとうことになります。
(※1)ただのちに掲載された漫画によると、先生のお友だちには不評だった模様? 女子高生向けではなさそうですしね。
(※2)独特な奇声や擬音、リアクション芸にその傾向が強く見られますね。
『子供学級』連載開始Open the Door to Dreams
2003年8月。高校3年の夏、同級生たちが受験勉強などに青春を燃やしていたであろう頃、のりお先生はひと足先に大人の世界に足を踏み入れていました。(※1)
「私の高校生最後の夏を返して。」 (「元祖!浦安鉄筋家族傑作選」の柱コメントより)
そんなふうにボヤいてみせるも、きっと充実感でいっぱいであったであろうのりお先生。
まずは連載への足がかりとして、読み切り『こちら彼女、校門前。』を発表します。
『こちら彼女、校門前。』
週刊少年チャンピオン2003年増刊号(※2)掲載作。
のりお先生のチャンピオンにおけるデビュー作である。
こち亀ならぬ、コチカノ。『子供学級』1巻に収録されている。
校門の間に挟まってしまった女子中学生の小田切風華が
抜け出そうとしたり放置されたりするサイレント劇。
アンケートにおいて、見事1位を獲得するという快挙を果たす。
(※1)浜岡先生の仕事場を訪問したのもこの頃。『子供学級』4巻より、8月9日(台風10号が直撃した日)のことと思われる。週刊少年チャンピオン2003年増刊号(※2)掲載作。
のりお先生のチャンピオンにおけるデビュー作である。
こち亀ならぬ、コチカノ。『子供学級』1巻に収録されている。
校門の間に挟まってしまった女子中学生の小田切風華が
抜け出そうとしたり放置されたりするサイレント劇。
アンケートにおいて、見事1位を獲得するという快挙を果たす。
(※2)「元祖!浦安鉄筋家族傑作選」
最初のチャンスをきっちりモノにする。やはり「もってる」人は違いますね。
折しも、のちに「暗黒期」などとも呼ばれるチャンピオン低迷期。
救世主となりうる、新たな才能が渇望されている時代でもありました。
そして2003年10月、ついに待ちに待ったときがやってきました!
短期集中連載という形ではありますが、『子供学級』が連載されることになったのです。
のりお先生にとっては、ひとつの夢が叶い、そしてさらに大きな夢の入口に立った
瞬間でもありました。
短期連載ということでいったん6話で終了しますが、これは読者の反応を確かめる事に加えて
のりお先生の高校卒業を待つ意味合いも強かったのではないでしょうか。
実際、先生が卒業するのに合わせるように、2004年3月より本格連載として再開されます。
『子供学級』
週刊少年チャンピオンで、2003年44号~2005年15号まで連載。
「見た目は子供 実は22歳」の女教師・小島梅子が暴力と流血の
日々に明け暮れるバイオレンス・スクール・ギャグ。
教師が率先して児童に容赦ない暴力を振るうなど、今なら
真っ先にPTAのやり玉に上がりそうな問題作&怪作。
ドラえもんライクなキャラ配置、ブラックジャックを模したキャラなど
各種のパロディや小ネタも満載。
しょーみな話、この漫画の評価は難しいところです。週刊少年チャンピオンで、2003年44号~2005年15号まで連載。
「見た目は子供 実は22歳」の女教師・小島梅子が暴力と流血の
日々に明け暮れるバイオレンス・スクール・ギャグ。
教師が率先して児童に容赦ない暴力を振るうなど、今なら
真っ先にPTAのやり玉に上がりそうな問題作&怪作。
ドラえもんライクなキャラ配置、ブラックジャックを模したキャラなど
各種のパロディや小ネタも満載。
ここでは「360度の方針転換」さんのレビューを紹介させていただきます。丸投げともいう。
雌伏のときHow long does a lion sleep?
2005年3月、そのシーズンに合わせたのか「卒業式エンド」という定番とも言える締めで『子供学級』は約1年に渡る連載を終了します。
営業部の力が強いとされる秋田書店では、コミックスの売れ行きが見込めないことから
理不尽にも「タンコーボンダシタイナ号」(※1)に乗せられてしまう連載も少なくありません。
特に短めの連載や、ギャグ漫画ではその傾向が強いです。
そうしたある意味不利な状況においても円満に連載を完結し、きっちり最後までコミックスを
出せたということは、のりお先生への期待の表れだったとも言えるのではないでしょーか。
『子供学級』4巻より。
決意も新たに次の一歩を踏み出す
のりお先生の図。
「よぅし!!」
「二度と編集部には行かない!!」
(※1)『クンクンカムカ』(沼田純)に登場した言葉。単行本を出してもらえないというのは、漫画家にとって死活問題。決意も新たに次の一歩を踏み出す
のりお先生の図。
「よぅし!!」
「二度と編集部には行かない!!」
このあとはしばらく表向きの活動を休止することになります。
ブログの更新を除いた(商業誌における)作品の発表は、一度だけに留まりました。
それが『こちら彼女、机の下。』です。
『こちら彼女、机の下。』
週刊少年チャンピオン2005年9月25日増刊号に掲載。
『こちら彼女、校門前。』の続編で、主人公も同じ小田切風華。
遅刻した彼女が教室に忍び込み、クラスメイトの机の下を這って
自分の席にたどり着くまでの小編。サイレントではない。
絵柄的には初期の『みつどもえ』に近づいている印象。
週刊少年チャンピオン2005年9月25日増刊号に掲載。
『こちら彼女、校門前。』の続編で、主人公も同じ小田切風華。
遅刻した彼女が教室に忍び込み、クラスメイトの机の下を這って
自分の席にたどり着くまでの小編。サイレントではない。
絵柄的には初期の『みつどもえ』に近づいている印象。
黒目が多くなって、線もすっきり。
キャラはだいぶ可愛く描かれています。
今では幻のパンチラ。
モロか。んまー破廉恥。
被害者第1号のコ。
廊下に立たされる。
らぶらぶカップルのふたり。
風華の腹いせ攻撃を受ける。
可愛いポニテガール。
でもルーズソックスが臭い。
最後は身動きが取れなくなった
ところに屁を浴びるオチ。
この作品のオクリ文で「週刊少年チャンピオンにて連載準備中」と明言されていたものの
その後長らく音沙汰は無し。
結果、この雌伏の期間は実に1年もの間に及ぶことになりました。
その③に続く
・週刊少年チャンピオン(2003年26号)
・週刊少年チャンピオン(2003年増刊号)
・週刊少年チャンピオン(2005年9月25日増刊号)
・のりぺぃじ
・『子供学級』コミックス